開発・新規事業
要件整理シート(サンプル)
要件定義で受け取れる資料のイメージを、架空の会社を例にした見本で紹介。業務の流れ、機能の優先順位、決まっていないことの整理例を掲載しています。
編集・発信:Nico合同会社
公開日: / 最終更新日:
架空の会社・架空の案件です。実際の案件ではありません。
架空の会社・架空の案件です。実在する企業・実際の案件ではありません。 Nicoが要件定義の成果物として、どのような形でお渡しするかをお伝えするために作成した見本です。数字・人名・社名はすべて例示です。
作成: Nico合同会社(サンプル)
想定ケース: 従業員12名の設備メンテナンス会社が、Excelと紙で行っている「案件・見積・請求の管理」を整理する
この資料の使い道: ① 社内で何を決めるかを揃える ② 開発会社(Nicoを含む)へ見積もりを依頼する ③ 作らないものを決める
0. この資料の読み方(1分で)
- まず「1. 要約」だけ読めば、判断すべきことが分かるようにしています。
- 「6. 機能の優先順位」で、今回作るもの/後に回すもの/作らないものを分けています。
- 「10. 未決事項」は、誰が・いつまでに決めるかまで書いています。決まっていないことを隠さずに書くのが、この資料の目的です。
1. 要約
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 解決したいこと | 案件の進み具合・見積・請求の状況が、Excel・紙・個人のメモに分かれていて、確認に時間がかかり、請求漏れが起きる |
| 最初に作るもの | 案件の一覧と、見積から請求までの状態(未見積/見積済/作業中/請求済/入金済)を一か所で見られる仕組み |
| 作らないもの(今回) | 会計ソフトの代わりになる機能、顧客向けのポータル、在庫管理 |
| 進め方の候補 | A: 運用の見直しのみ / B: 既存のクラウドサービス(ノーコード)で構築 / C: 独自開発 → 今回は B を第一候補(理由は7章) |
| 決めてほしいこと | ① 判断者(誰が最終決定するか) ② 請求書の発行を既存の会計ソフトのまま残すか ③ 過去3年分のExcelを移行するか |
| 目安の期間(例) | 要件の確認 2〜3週間 → 試作・調整 → 運用開始(※条件により変わる) |
2. 目的と、うまくいったかの判断基準
目的(一文)
案件の状況を、事務所にいなくても全員が同じ画面で確認でき、請求の漏れや二重入力をなくす。
判断基準(運用開始から3か月後に確認する)
| 指標 | 現在(例) | 目標(例) | 確認方法 |
|---|---|---|---|
| 請求漏れ・遅れの件数 | 月2〜3件(担当者の記憶ベース) | 0件 | 月末に案件一覧と請求書を突き合わせる |
| 「あの案件どうなった?」の確認電話・チャット | 1日あたり約10回(体感) | 半減 | 2週間、チャットの該当件数を数える |
| 月次の集計にかかる時間 | 約6時間(事務担当) | 2時間以内 | 事務担当の記録 |
※ 現在の数値は、ヒアリング時の本人の見立てです。運用前に1〜2週間、実際の件数・時間を測って置き換えます。
3. 現状の業務の流れ(案件1件分をたどる)
要望を機能にする前に、実際の案件1件を、最初から最後まで追いました。
| 順 | 誰が | 何をしている | 使っているもの | 困っていること |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 営業 | 問い合わせを受け、現場を確認する | 電話・メール・手書きメモ | 内容が個人のメモに残る |
| 2 | 営業 | 見積を作る | Excel(見積テンプレート) | 版が複数でき、最新が分からない |
| 3 | 事務 | 見積を顧客へ送る・受注を確認する | メール・Excel | 受注した案件を一覧表へ手で転記する |
| 4 | 現場 | 作業日程を調整する・作業する | 共有カレンダー・紙の作業報告書 | 作業完了が事務に届くまで1〜3日かかる |
| 5 | 事務 | 作業報告書を見て請求書を作る | 会計ソフト | 報告書が届かないと請求が止まる |
| 6 | 事務 | 入金を確認し、一覧表に反映する | 会計ソフト・Excel | 一覧表への反映を忘れることがある |
気づいたこと
- 同じ案件情報を3か所(見積Excel・一覧表・会計ソフト)に入力している。
- 「請求漏れ」の原因は、入力ミスより作業完了の連絡が遅れることにある。→ 画面を作る前に、連絡の流れを直す必要がある。
4. 困りごとの整理(症状と原因を分ける)
| 症状(見えていること) | 原因として考えられること(仮説) | 確認したこと / 確認方法 |
|---|---|---|
| 請求漏れがある | 作業完了の連絡が事務に届かない | ○ 直近の漏れ3件を確認:3件とも報告書の遅れ |
| 最新の見積が分からない | ファイル名のルールがない | ○ 現物を確認:同一案件で最大4ファイル |
| 集計に時間がかかる | データが3か所に分かれている | △ 要確認:実際に何分かかるかを測る |
5. 関係者と、決める人
| 役割 | 人数 | 使う場面 | 主に必要なこと |
|---|---|---|---|
| 経営者(代表) | 1 | 全体の状況確認・最終判断 | 売上見込みと請求状況の一覧 |
| 営業 | 3 | 見積作成・受注確認 | 外出先(スマホ)から案件を見る・更新する |
| 事務 | 2 | 転記・請求・入金確認 | 二重入力をなくす |
| 現場担当 | 6 | 作業・報告 | 入力が増えないこと(写真と一言で報告できる) |
判断者: 代表。ただし、現場の入力方法は現場リーダーの合意を条件にする。 → 現場の入力が増えると定着しないため、現場の負担を判断基準に含めます。
6. 機能の優先順位(今作る/後に回す/作らない)
| 区分 | 機能 | 理由 |
|---|---|---|
| 今作る | 案件の一覧と状態管理(未見積/見積済/作業中/請求済/入金済) | 目的の中心 |
| 今作る | 作業完了の報告(スマホから、写真と一言) | 請求漏れの原因に直接効く |
| 今作る | 状態が変わったときの通知(事務へ) | 連絡の遅れをなくす |
| 今作る | 絞り込み・検索(顧客名/状態/担当) | 確認の電話を減らす |
| 後に回す | 見積書のPDF自動作成 | 現行のExcelで当面可能。運用が安定してから |
| 後に回す | 会計ソフトとのデータ連携 | 先に運用を固める。連携先の仕様確認が必要 |
| 後に回す | 売上・案件数のグラフ | 一覧の運用が定着してから |
| 作らない | 会計機能(仕訳・決算) | 既存の会計ソフトで足りている |
| 作らない | 顧客向けポータル | 現時点で要望がなく、運用負担が増える |
| 作らない | 在庫管理 | 今回の目的に含まない |
7. 進め方の候補と、第一候補の理由
| 案 | 内容 | 向いている条件 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| A. 運用の見直しのみ | 作業完了の連絡ルールを決め、Excelの運用を整える | 課題が連絡の遅れだけの場合 | 二重入力は残る |
| B. 既存のクラウド(ノーコード)で構築 | 一覧・状態管理・通知を既存サービスの設定で作る | 機能が一覧・状態・通知中心で、利用者が12名程度 | 画面や動きに制約がある。月額の利用料がかかる |
| C. 独自開発 | 必要な機能を設計して開発する | 会計ソフトとの高度な連携、独自の計算が必要な場合 | 費用・期間が増え、保守の体制も必要 |
第一候補は B。 理由:
- 今回必要な機能(一覧・状態・通知・スマホ入力)は、ノーコードで足りる可能性が高い。
- 利用者が12名で、短期間で試せる。
- 運用が固まってから、必要なら C に移る判断ができる(判断を先送りしても損をしない設計)。
Cを検討する条件(今は該当しない): 会計ソフトとの自動連携が必須になった/権限が複雑になった/利用者が大きく増えた。
8. データ項目(案件)
| 項目 | 入力する人 | 必須 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 案件名 | 営業 | ○ | |
| 顧客名・連絡先 | 営業 | ○ | 既存の顧客リストと重複しないようにする(要確認) |
| 状態 | 営業・事務・現場 | ○ | 5段階 |
| 見積金額 | 営業 | ○ | 税込・税別を統一する(要決定) |
| 作業予定日/完了日 | 現場 | ○ | |
| 作業報告(写真・一言) | 現場 | ○ | |
| 請求日・入金日 | 事務 | ○ | |
| 担当者 | 営業 | ○ |
9. 権限・運用
| 項目 | 内容(案) |
|---|---|
| 見られる人 | 全員(金額は営業・事務・代表のみ) |
| 変更できる人 | 状態の変更:担当者と事務/金額の変更:営業と代表 |
| 管理する人 | 事務担当(項目の追加・利用者の追加) |
| 運用開始の条件 | 現場リーダーが1週間試して「入力できる」と確認する |
| 過去データ | 直近1年分を移行(3年分は未決。10章参照) |
10. 未決事項(誰が・いつまでに決めるか)
| # | 決めること | 選択肢 | 決める人 | 期限(例) | 決まらないと… |
|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 最終的な判断者 | 代表/営業責任者 | 代表 | 第1週 | 要件が確定できない |
| 2 | 請求書の発行を会計ソフトのまま残すか | 残す/一覧から発行する | 代表・事務 | 第1週 | 開発範囲が大きく変わる |
| 3 | 過去データの移行範囲 | 1年/3年/しない | 事務 | 第2週 | 移行作業の見積が出せない |
| 4 | 見積金額の税込・税別 | 税込/税別 | 事務 | 第2週 | 集計の基準が揃わない |
| 5 | 顧客リストの元データ | 既存Excel/会計ソフト | 事務 | 第2週 | 顧客の重複が残る |
11. リスクと、先に確認しておくこと
| リスク | 影響 | 先にやること |
|---|---|---|
| 現場が入力しなくなる | 状態が更新されず、仕組みが使われない | 現場リーダーと入力画面を1週間試す |
| 既存サービスの機能制限で要望が満たせない | 作り直しになる | 必須の3機能(一覧・報告・通知)で小さく試す |
| 個人情報・顧客情報の扱い | 情報漏えい | 見られる人の範囲(9章)を先に決める |
12. 次のステップ
- 10章の未決事項 #1・#2 を決める。
- 現場リーダーと、スマホでの報告の流れを確認する(30分)。
- 第一候補 B(ノーコード)の試作を、必須の3機能に絞って作る。
- 試作で1週間運用し、2章の判断基準に沿って、続ける/直す/C に移るを判断する。
13. この資料を見積依頼に使う場合
他の開発会社へ見積を依頼するときは、次を添えると、条件を揃えて比較できます。
- 1章(要約)、6章(優先順位)、8章(データ項目)、9章(権限)
- 「第一候補は B。ただし C の提案も受け付ける」など、検討してほしい範囲
- 回答してほしい形式(例: 工程別の工数と金額/月額の費用/保守の範囲)
- 決まっていない事項(10章)は、そのまま未決として渡す
補足: このサンプルで大切にしていること(Nicoの考え方)
- 答えを渡すのではなく、判断できる状態をつくる。 結論だけでなく、判断の基準・選択肢・決める人を残します。
- 作るものと同じくらい、作らないものを決める。
- 決まっていないことを隠さない。 未決事項は期限と担当をつけて残します。
- 現場の負担を、判断基準に入れる。 使われない仕組みは、作っても意味がないためです。
