構造を観る、未来を創る。第8編 / 全8編

PHILOSOPHY / LIFE

人生は、自分を発見することではなく、創り続けること。

Life is about Creating Yourself.

人は完成した「本当の自分」を発見するだけの存在ではなく、出会い、経験、関係、環境によって変化し続ける。Nicoが創造を広く捉える理由、技術や事業によって選択肢を増やしたい理由、そして創造しない自由も同時に守りたい理由を、会社の思想として整理する。

執筆:ストット玲奈(Nico合同会社 代表)

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創ることを表すイメージ写真
説明用のイメージ写真です。Nicoの実績・お客様・社員の写真ではありません。

Life is about Creating Yourself. は、成長を強いる言葉ではない。

I. 固定された自分ではなく、変化する自分

01. 自分は最初から決まっているのだろうか

人はしばしば「本当の自分を見つけよう」と言う。しかし私は、自分というものがどこかに完成した形で隠れていて、それを発見すれば人生が定まるという考え方に、少し違和感がある。私たちは出会う人、経験する仕事、訪れる場所、受け取る言葉によって、考え方や感じ方を変えていく。以前は興味がなかったことに惹かれ、当たり前だと思っていた価値観を手放すこともある。もしそうなら、自分は発見される固定物というより、変化し続ける過程として捉えられるのではないか。

第1章の見取り図:固定された自分ではなく、変化する自分
  1. 最初から決まる?01. 自分は最初から決まっているのだろうか
  2. 出会い02. 出会いが、次の自分をつくる
  3. 生成関数03. 生成関数という比喩
  4. 自由04. 自由を、別の角度から考える

第1章の小見出しを、考え方のつながりで並べた概念図です。実際の案件や数値を示すものではありません。

02. 出会いが、次の自分をつくる

自分の変化を考えるとき、出会い、観測、解釈、変化、創造という循環を思い浮かべる。世界に触れ、その出来事を自分なりに受け取り、考え方や行動が少し変わる。その変化が次の仕事や表現や人との関係に現れ、また新たな出会いを生む。これは実証済みの人間の法則というより、私が人生を理解するために用いている哲学的なモデルだ。けれど、自分が今まで経験してきたことを振り返ると、この循環には強い実感がある。

03. 生成関数という比喩

同じ出来事でも、人によって意味が違うのはなぜだろう。私は、人が持つ記憶や価値観、身体の状態、環境によって受け取り方が変わるからだと考えている。便宜的に、ある入力から解釈や判断が生まれる働きを「生成関数」と呼んでみる。入力が変われば出力も変わるかもしれないし、経験によって関数そのものも少しずつ変わるかもしれない。もちろん人間を数式に還元できると言いたいわけではない。説明のための比喩として、固定された性格だけでなく変化する条件に目を向けたいのだ。

04. 自由を、別の角度から考える

私たちは自分の生まれや、過去の経験、身体のすべてを選べない。それでも環境を変えたり、新しい人に出会ったり、別の行動を試したりすることで、次に起こることの条件へ働きかけられる場合がある。私は、この意味での自由に関心がある。あらゆる原因から独立した意思があると証明することではなく、現実の中で選べる可能性がどう広がるのかを考えることだ。責任についても、自由意志の有無だけで決まるとは思わない。行為が誰に影響し、どう予防し、どう修復するかという社会的な関係から考える必要がある。

II. 創造を広く捉える

05. 創造とは、作品を作ることだけではない

創造という言葉からは、音楽やデザイン、発明を連想するかもしれない。私にとって創造はもう少し広い。昨日とは違う問いを立てること。人と人の関係を作ること。仕事の仕組みを変えること。自分の生活の選択肢を増やすこと。それらもまた、既にあるものを別の形へ変えていく行為だと考えている。私は音楽をつくるとき、出会いや別れ、記憶が自分に残した変化を扱う。事業を考えるときも、誰かの可能性を広げる仕組みをつくりたいと考える。形は異なっても、変化を何かとして世界へ返すという点でつながっている。

第2章の見取り図:創造を広く捉える
  1. 創造を広く05. 創造とは、作品を作ることだけではない
  2. 創り続けなくても06. 創り続けなくても、存在には価値がある
  3. 会社を通じて07. 会社を通じて実現したいこと
  4. 少しずつ私に08. 出会うたび、私は少しずつ私になる

第2章の小見出しを、考え方のつながりで並べた概念図です。実際の案件や数値を示すものではありません。

06. 創り続けなくても、存在には価値がある

ただし「人生は自分を創ることだ」という言葉が、常に成長し続けなければならないという圧力になってしまうなら、私が伝えたいこととは違う。休むことも、何も成果を出さない時間も、同じように人生の一部だ。何かを作る能力や社会的な成果によって、人間の価値が決まるわけではない。創造とは義務ではなく、可能性のひとつであってほしい。変化したくないときや、変化できないときの自分まで否定する思想にはしたくない。

07. 会社を通じて実現したいこと

Nicoの掲げる「Life is about Creating Yourself.」には、一人ひとりが、自分に与えられた選択肢だけに閉じ込められず、新しい経験や創造にアクセスできる社会をつくりたいという願いがある。AIやデザイン、事業支援は、そのための手段になり得る。誰かが創造を始めるハードルを下げる。複雑な課題を整理して一歩を踏み出せるようにする。異なる人や知識の間につながりを生む。私は、技術を人間に置き換えるものとしてだけでなく、人が選べる未来を広げる道具として使いたい。

08. 出会うたび、私は少しずつ私になる

自分の考えが最初から完成していたとは思わない。これからも新しい人や世界との出会いによって、変わり続けるだろう。変化はいつも望ましいとは限らず、別れや喪失から生まれることもある。それでも、その経験をどう受け取り、次へどうつなげるかは、今後の生き方に関わってくる。私にとって人生とは、正しい自分を見つけて固定する旅ではない。まだ知らない自分になり得る条件に出会い、そのたびに新しい形を試していく過程なのだと考えている。

III. 技術と他者が生む変化

09. 変化は、いつも成長という形をしていない

私が「出会いによって自分が変わる」と言うとき、それをすべて前向きな成長として語りたいわけではない。大切な人との別れによって、以前できたことが難しくなる場合もある。失敗によって行動が慎重になり、可能性を狭く感じることもある。それでも経験は自分の受け取り方や選択に影響する。創造という言葉を使うなら、喜ばしい変化だけでなく、矛盾や喪失を抱えたまま次の形を探すことも含めたい。人生が美しい物語として一貫している必要はない。

第3章の見取り図:技術と他者が生む変化
  1. 変化と成長09. 変化は、いつも成長という形をしていない
  2. 技術と選択10. 技術は、人間の選択を増やせるか
  3. 他者との関係11. 他者との関係によって、自分は創られる
  4. 固定しない答え12. 「自分らしさ」を、固定した答えにしない

第3章の小見出しを、考え方のつながりで並べた概念図です。実際の案件や数値を示すものではありません。

10. 技術は、人間の選択を増やせるか

AIは多くの作業を容易にする一方で、人が自分の判断を手放してしまう可能性もある。私はAIを導入するとき、作業時間が減るかだけではなく、人が何を新たに選べるようになるかを考えたい。創作の技術的な壁が下がること。専門知識がない人にも試作品を作れる機会が生まれること。一方で、AIの提案が唯一の正解のように扱われれば、選択肢が広がったとは言い切れない。技術は人の代わりに人生を決めるためではなく、人が自分で試し、修正し、選び直せるように使いたい。

11. 他者との関係によって、自分は創られる

自分を創り続けるという言葉は、ともすると一人で自分を作り替える話に聞こえる。しかし、私が考える変化には必ず他者や世界との関係がある。新しい問いをくれた人、価値観を揺さぶった出来事、一緒に何かを作った仲間。私はそうした出会いを、自分の外側にある資源ではなく、自分が変わるための条件として見ている。同時に、自分が作った仕事や作品が、誰かの新たな出会いや変化につながることもある。その循環の中で、個人の創造と社会の創造はつながっている。

12. 「自分らしさ」を、固定した答えにしない

人はときどき「本当の自分を見つけたい」と言う。私はその言葉に共感しながらも、最初からどこかに完成した自分が置かれているのだろうか、と考える。経験する前には知らなかった好き嫌いがあり、人と出会って初めて持つようになる価値観がある。数年前には想像できなかった仕事や表現を選ぶこともある。だから、今の自分を一つの性格や職業で定義しすぎると、これから生まれる可能性を閉ざしてしまう気がする。ただし、変わることが常に良いわけではない。昔から大切にしてきたものを守る選択にも価値がある。私が「創り続ける」と表現するとき、それは絶えず新しくなれという命令ではなく、これからの経験によって自分のあり方が変わる余地を認めることに近い。

IV. 比喩と自由の限界を考える

13. 生成関数は、便利な比喩であって人間の完全な説明ではない

経験や記憶、身体、関係性、置かれた状況が相互に作用し、考えや行動が生まれる過程を「生成関数」という比喩で考えることがある。同じ出来事を経験しても、人によって受け取り方は異なり、同じ人であっても時期によって反応が変わる。入力と出力の間には、その人の履歴がある。しかし、人間を数式一つで予測できるとは思っていない。比喩の価値は、複雑な存在を完全に説明できることではなく、普段見落とす関係に光を当てられることにある。私がこの考え方から受け取るのは「自分は固定されたものではなく、環境や出会いによって変化し得る」という可能性だ。それは人を単純な機械として扱うための主張ではない。

第4章の見取り図:比喩と自由の限界を考える
  1. 比喩の限界13. 生成関数は、便利な比喩であって人間の完全な説明ではない
  2. 自由意志と責任14. 自由意志と責任を、同じ問いに閉じ込めない
  3. 広げる技術と狭める技術15. 選択肢を増やす技術と、選択を狭める技術

第4章の小見出しを、考え方のつながりで並べた概念図です。実際の案件や数値を示すものではありません。

14. 自由意志と責任を、同じ問いに閉じ込めない

選択は自分だけの力で生まれるのだろうか。育った環境、身体の状態、偶然の出会い、社会の制度は、私たちの判断へ影響している。こう考えると、完全に何ものにも左右されない自由意志を想定するのは難しい。一方で、そのことから直ちに責任が消えるとは思わない。選択がどう生まれたかという因果の問題と、起きた結果に対して誰が何を説明し、修復し、再発を防ぐかという社会的な問題は、分けて考えられるからだ。責任を考えるなら、非難するべきかという話だけでなく、影響を受けた人をどう守るか、仕組みをどう変えるかも問いたい。自分が何を選べたかという問いと、これから選べる条件をどう作るかという問い。私は後者にも自由の実践的な可能性があると感じている。

15. 選択肢を増やす技術と、選択を狭める技術

AIやデジタル技術には、これまで専門知識や時間が必要だった仕事を、より多くの人に開く可能性がある。文章を形にする、アイデアを試作する、複雑な情報を整理する。こうした行為のハードルが下がれば、新しい創造へ踏み出しやすくなる。一方で、技術が提示するおすすめや評価基準が、本人の選択を知らず知らず狭める可能性もある。便利な提案が唯一の答えに見えれば、異なる選択肢へ出会う機会は減ってしまう。だから私は、AIの導入を単なる作業時間の短縮として評価したくない。使う人が理解を深め、判断を修正し、自分の意思で違う道を選べるか。人間が機械の判断に従うことではなく、機械を通じて人間の可能性が広がることを目指したい。

V. 創造しない自由と会社の思想

16. 何も生み出さない日にも、存在の意味がある

「人生は自分を創ること」と言うと、常に成長し、何かを生産し続けなければならないようにも聞こえる。私は、その解釈を避けたい。休むことも、誰かとただ一緒に過ごすことも、何も決めずに時間を使うことも、人生の一部である。創造を成果物や経済的価値だけに限定すれば、人が生きる意味はあまりにも狭くなる。私が大切にしたいのは、自分の存在価値を証明するために創り続けることではない。出会いによって変わる可能性を持ちながら、変わらない自由も持っていることだ。誰もが同じ速度で前進する必要はなく、立ち止まることにも意味がある。創造性を広げたいという思想は、その人を新しい規範で縛るものであってはならない。

第5章の見取り図:創造しない自由と会社の思想
  1. 生み出さない日16. 何も生み出さない日にも、存在の意味がある
  2. 予定にない変化17. 他者との出会いは、自分の予定にない変化を生む
  3. 思想の共有範囲18. 会社の思想として、どこまで共有できるか
  4. 社会を創る19. 自分を創ることと、社会を創ること

第5章の小見出しを、考え方のつながりで並べた概念図です。実際の案件や数値を示すものではありません。

17. 他者との出会いは、自分の予定にない変化を生む

出会いが人を変えるとき、その変化はいつも自分で望んだ方向とは限らない。人との関係によって新しい価値観を知ることもあれば、傷つき、自分の弱さを知ることもある。私は「出会えば成長する」と単純には言いたくない。経験をどのように受け取り、そこからどんな意味を見いだすかは、その時々の状態に左右される。時には何も学びに変えず、ただ悲しむ時間が必要なこともある。それでも、他者との関係が自分の考え方を変えてきたことは確かだと感じる。自己創造という言葉は、自分一人で意志の力を使って完成するという話ではない。自分では制御しきれない出会いに影響されながら、少しずつ変わっていく存在を認めるための言葉でもある。

18. 会社の思想として、どこまで共有できるか

代表個人の哲学と会社の方針は、重なる部分があっても同一ではない。仕事をする人全員が、私と同じ世界観を持つ必要はないと思う。むしろ異なる考え方の人が、自分の価値観を維持しながら一緒に働ける会社にしたい。だから、Nicoの思想を事業に結びつけるときには、抽象的な共感だけでなく、行動上の原則へ変換する必要がある。顧客の選択肢を不当に狭めない。技術を導入するときには使う人の理解と判断を尊重する。相手の考えを聞き、最初の前提を更新する余地を持つ。創造性を評価するとき、成果の量だけで人の価値を判断しない。このような姿勢なら、哲学に同意するかどうかとは別に、仕事の進め方として議論できる。

19. 自分を創ることと、社会を創ること

私たちは自分が置かれる環境から影響を受け、その環境に小さく働きかけてもいる。新しい事業や表現を生み出すことは、他者が次に出会う選択肢を変える行為でもある。だから私は、事業設計と自己創造の間に連続性を感じている。ただし、一つの事業で社会を大きく変えられると安易に信じたいわけではない。実際に使われるのか、望まない影響を与えていないか、継続可能な形なのかを確かめる必要がある。思想は実績の代わりにはならない。むしろ、成果を急ぐときにも何を守りたいかを思い出させる基準として存在してほしい。私自身も完成した考えを持っているわけではない。事業と人との出会いを通して、これからも自分の考えを更新していくのだと考えている。

著者について

ストット玲奈(Nico合同会社 代表)。 複数部門の要望整理と投資判断支援、新規事業のMVP・ロードマップ設計、自社プロダクトの企画・開発・運営に取り組んでいます。

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